外国産馬の選び方・競走目的


 一年に一度、12月3週の初めに必ず開催される海外トレーニングセール。WP5で は外国産馬を導入できる唯一の機会なのと同時に、信頼性の高い素質馬を獲得できる チャンスである。
 外国産馬の平均スピード値は日本産よりも高い。調教師にすばらしいとコメントさ れたお馬さんのほとんどはスピードS〜Aなのは国内でのセリと同じ基準だが、その コメントを得られるお馬さんの量が国内セリとは比較にならないほど多い。
 これでは外国産馬を擁する馬主の成績が平均して高いのも頷ける。外国産馬による 物量作戦をとっているヘイザンやタイガ、ユリノが強いのは至極当然の話だろう (もっとも、国産の良血馬を百頭以上も所有する吉野輝文氏には基本的に歯が立たな いのだが)。
 ただし、上場されてくるお馬さんのほとんどは億単位の評価額であるばかりではな く、評判の高い素質馬には相馬氏(ユリノ)を初めとする有力馬主がこぞって入札して くる傾向にあるため落札価格は軒並み高騰してしまう。
 この場合、ヘタに競った挙げ句5億以上の出費となることもザラで、苦しい台所事 情に悩まされがちな序盤では破産一直線という結末にもなりかねない。
 運良くドバイワールドカップやBCクラシックを勝てれば一気に3億4億のリター ンを得られるのも確かだが、時期的にその成果を得られるまで単純計算ながら2年弱 もかかる。序盤の資金不足は牧場施設拡張の遅れなどの悪循環を往々にして招きやす いので、できれば避けたい。
 とは言え、お金を出さなければ走るお馬さんが買えないのもまた事実である。問題 は、どこまでお金を出すかだ。そして買うにしても、どのような視点でお馬さんを選 べば良いのか。
 このチャプターでは海外セリの有効活用法、特に走るお馬さんを判断する方法をい くつか述べていこう。なお海外セリは単に走るお馬さんだけを選べば良いというもの ではなく、生産者の視点に立って考えると別の見方もできるのだが、それについては 別の題目とさせていただく。

 さて、ウイニングポストでは相馬眼という表現で、プレイヤーの「馬を見る目」が 馬主アルゴで評価されるのだが、少なくともこれまで筆者がWP5をプレイしてきた 限り、お馬さんのグラフィックをじっと見ることだけでスピード値をはじめとするパ ラメータを判断することは不可能だと思っている。
 走る馬を体型だけで判断できたのはWP2までの話。WP3以降はコメントという 形で仔馬のパラメータに関する情報を集めなければならず、プレイヤーはその集めた コメントから走るかどうかを判断しなければならない。
 つまりWP5におけるプレイヤーの相馬眼とは、コメントによるデータ収集をもと にした判断の正確さを指しているといえる。
 なぜいきなり相馬眼の話をしたのかというと、プレイヤーが走りそうなお馬さんの 判断をするにあたり、最も必要なのはコメント収集から得たデータだからである。と りあえずセールに出向き上場リストをざっと眺めてみたところで、パラメータが総合 的に高いお馬さんを見抜くことはやはり不可能なのだ。
 従って、ここでもデータの収集が必要となる。もっともセリに出向いての一発勝負 なので、収集できるデータの種類・量は限られている。その限られたデータをどう活 用すればいいのだろうか。

○閃き
 まず参照すべきなのがこれ。同行してくれた三名のうち、調教師にオススメを訊い てみるとうまく言葉にできないんですがと唐突に指名してくる場合がある。
 どうやら上場リスト中、最速クラスのスピード値を持つと思われるお馬さんを指名 するようで、基本的にこれは買いと考えて良い。ただ、入札に名乗りを上げている馬 主の顔ぶれや懐具合と相談した上で、あまりに出費が大きくなりそうならば降りるの もアリだ。
 なおこの「閃き」というのは各調教師の隠しパラメータのようで、正確さではなく 確率を指す。傾向としては目に見えるパラメータ(双眼鏡の数)が低い調教師ほど閃き に優れているという。
 代表的なのは結城氏の叔父らしい上郷師や、1・2・3のパラメータながらユリノ パワーでリーディング上位に食い込む星田師。反対に萩沢師や仁藤師は閃きに関して は中間のようだ。
 余談だが、単純に「相馬眼」のバラメータが高ければ、調教師が最も頼りになると いえる。同時に閃いてくれればというのは、いささか贅沢なのかもしれない。確実な 相馬眼を持つ調教師との友好度を上げるために相馬眼5つの山中師や白田師へ有力馬 を預けるのは基本戦略であるとしても、セリでの「閃き」だけのために上郷師や星田 師へ預託するというのは……微妙な話か。

○コメント
 同行者三名+αからのコメント。牧場長は気性と健康、調教師は兄弟馬とスピード 値の推測、秘書は評判と入札参加予定の馬主名、そしてたまに他の馬主がやってく る。
 この中で最も重要なのは他の馬主、つまり誰が獲得に名乗りを上げているかであ る。
 海外セリに顔を出してくる馬主は限られており、まず最も遭遇しやすいのがユリノ こと相馬氏。そして高めの評価額とタイムに反応してくるヘイザン(平山氏)とタイガ (大河F)。ややマイナー気味な血統に食指を動かしてくるシム(和賀氏)、やっぱり高 いお馬さんに反応するマサイチ(関内氏)、プラス毛色だけに反応してくるホウオウオ リヒメを除くと、他に出てくるセンコウやトキ、キルトに菊田氏、酒井氏に吉野系二 人などは判断材料がややわかりにくいかもしれない。

 では、代表的な顔ぶれについて検証してみよう。
 最初に相馬氏は、はっきり言ってしまうとただのミーハー。先生(調教師)がまあま あの馬とか流すような口調でもこの馬はすばらしいワとか騒いでいる光景をよく目に する。試しに買ってみると……大方、先生が話していた通りと思われる。
 もちろん先生がすばらしいとコメントしているお馬さんに対しても頻繁に反応して くるし、先述の閃きとカブる場合もある。またそのお馬さんが血統的価値の高い血統 構成である場合は、やはりけっこうな出費を覚悟しなければならないだろう。
 総合的に判断すると、彼女はいわゆる外車マニアの一人であり、公(馬主アルゴ)に は海外幼駒の相馬眼が高いとされているが実際はそうでもない。稀にユリノ外車が活 躍している場合もあるが、セリで反応していたお馬さんでない場合だってあるのだ。 プレイヤーが関わっていないところでのシステム処理が実におざなりであるかを示す 凡例のひとつといえる。
 また余談になるが、相馬氏は8月の国内セリにも顔を出すことがある。その時に反 応してくるお馬さんはというと……これがなかなか良いお馬さんだったりする。もし かしたら彼女の相馬眼がアテになるのは、海外ではなく国内のセールなのかもしれな い。
 次に平山氏と大河Fの蒼沢氏。この二人は自家生産+外国産馬のラインナップで、 かつ外国産馬が多めという共通項がある。公開調教でのタイムが速めでかつ評判・評 価額が高めのお馬さんに反応し、かつ調教師の閃きともカブる場合があり、走らない お馬さんに反応してくることはあまりないと考えて良い。そして直接反応してくる数 は1、2頭といったところ。
 確実性という要素では相馬氏よりも遥かに高いのだが、好タイムの評判馬に反応し てくるということは、やはり落札価格の高騰が懸念される。彼らが評価額1億を下回 るお馬さんに反応してくることは非常に稀だ。アテにはなるのだが、資金力任せのパ ワープレイができない状況ではいささか苦しいかもしれない。
 零細血統かつ自家生産がお好みらしいシムの和賀氏。外国産馬の導入は異系血脈の 活用が目的なのだろうか。血統と素質の両方を加味しているようだが、やや血統の方 が優先されているようだ。単純に走るだけでなく零細血統の国内導入を考えているの なら、同調するのもアリだろう。
 ヘイザンタイガほどではないが、比較的外国産馬の導入に積極的なセンコウの安藤 氏にトキの安部氏。ヘイザンタイガとの違いは評判に左右されない点。つまり比較的 安い評価額でも、調教師がすばらしいと言っている状態で彼らが顔を出していれば、 それなりに期待できると思われる。
 単に高額馬だけに反応してくる毎度おなじみ関内氏と、好きな毛色の高額馬がいる と事前にやってきてまでアピールしてくるホウオウオリヒメ。やはり調教師の閃き・ 評価とカブらない限り、この三人については参考外としても問題ないだろう。
 さて上記以外の馬主たちはあまり特徴は見えないのだが、実は最も厄介というか侮 れない相馬眼をしているのは、この「その他大勢」の中にいる。
 誰なのかというと、吉野系の二人。吉野克紀氏(カツ)と社来RHの吉野春文氏(ハ ル)だ。
 純然に能力だけで判断していると思われるのは先述のセンコウやトキとも似ている のだが、この二人(勝手ながらカツ・ハルと表記する)の相馬眼は驚異的だ。推測にな るのだが、おそらくカツ・ハルはスピード値だけでなく、サブパラメータも含めた総 合力で判断しているものと考えられる。
 試しにカツ・ハル反応馬の血統表を眺めてみると、ニックスの成立は控えめでも血 脈活性化配合や隔世遺伝などの因子強調が効果的に働いていたりする場合が多い。
 また血脈活性化配合が成立していなくても母父○で活力補完のスポイラーを抑えて いたりと、配合理論の成熟度も高かったりする。つまりカツ・ハルは血統表に裏付け られた総合能力で判断しているように思えるのだ。
 つまり結論は、調教師が閃いた若しくはすばらしいとコメントしていて、かつカツ ・ハルが反応しているお馬さんは、総合能力が高めである。
 特にカツ・ハルのどちらかが「私の好みにぴったりで〜お譲りするわけにはいきま せん」とか「できれば手に入れたいorあんまり値段を吊り上げないでくださいよ」な んて反応してきた場合は、できる限り入手した方が良い。もちろん財布とも相談しな ければならないが、うまく競り落とすことができれば運用法次第で活躍できる可能性 が非常に大きくなる。

○血統
 両親の名前をはじめとする血統表。ここで確認すべきなのは血統構成と配合理論の 成立具合。
 ニックス、血脈活性化配合、母父○、隔世遺伝、活力補完など、血統表から示され る情報はなかなか多く、軽視はできない。調教師からのコメントや、他馬主(特にカ ツ・ハル)の反応を裏付けるデータとして活用できるだろう。
 また余裕があれば、種牡馬入り・繁殖入り後の配合のしやすさについても検証して みよう。ニックス配合をするにしても血脈活性化配合が取れるか、また血脈活性化配 合による因子強調がしやすいかどうかを判断材料にするのもアリといえる。

○タイム
 海外セリにだけ出てくるデータ。公開調教で計測した1ハロン(約200m)のタイムを 指す。
 一般的にはタイムが速いお馬さんほど、調教師が「すばらしい〜」とコメントする 割合が多いようだ。11秒を切っていれば大抵すばらしいとコメントされて、かつヘイ ザンタイガが反応してくる可能性が大きい。反対に11秒代後半のお馬さんに対しては 調教師も素っ気なく、他馬主も稀になぜかユリノだけが一人騒々しい光景をよく目に するだろう。
 ひとつ認識しなければならないのは、このタイムが示しているのはスピード値だけ ではなく、仕上がりの早さも含まれるということだ。つまり成長型が早熟であるほど タイムは速くなる傾向にあり、仕上がりの遅い晩成タイプなお馬さんのタイムが11秒 を切ることはあまりないようだ。
 仕上がり早なのは決して悪いことではない。特に資金繰りの苦しい序盤では、なに より即戦力であることが求められる。適性如何では早々に海外へ送り込み、結果を出 してくれれば賞金だけでなく名声アップにも貢献してくれる。3歳末に引退させるま で可能な限り稼いでもらえるのだ。
 一方タイムは11秒台前半と平均的ながら、調教師がすばらしいとコメントしていて つらに例のカツ・ハルが反応しているお馬さんはなかなかの逸材とも考えられたりす る。
 つまりタイムから得られるデータは成長型とスピード値で、どちらかというと成長 型の方がややウェートが大きいと判断して良いだろう。

・外国産馬の注意点
 こうしていろいろなデータを参照し、走りそうな外国産馬を入手できたとしても、 安心するのはまだ早い。なぜならこの段階では、まだ明け(翌年)2歳の仔馬を購入し たに過ぎないからだ。
 ところで、先ほどから外国産馬を賛辞するようなことをけっこう述べていた感はあ るが、確かに外国産馬はスピード値は高めで重賞戦線でも頑張ってくれるお馬さんが 多いものの、サブパラメータのバランスに問題があるお馬さんもまた多い傾向にあ る。
 難しいのは、そのサブパラメータを購入前に把握できない点だ。当歳・1歳時にコ メントでサブパラメータをある程度把握できる、国内幼駒との最大の違いである。
 実際に活躍できるかどうかは、言うまでもなくプレイヤーにかかっている。預託厩 舎の選択からサブパラメータなどのデータ収集、得たデータを元にしたレース選択が 必要になるだろう。
 外国産馬に限らず、所有しているお馬さん一頭一頭が活躍できる環境を作り出すの は、オーナーであるプレイヤーの大切な役目なのである。


文:迷品短槍