外国産馬の選び方・生産目的


 別のチャプターでもいくつか触れているが、海外トレーニングセールは自家生産馬 が走らない馬主や、国内の有力な牧場とのコネクションを持たない馬主への救済措置 ではもちろんない。
 外国産馬として日本でデビューしても、活躍すれば普通に種牡馬入り・繁殖入りで きるのは変わらない。なにが言いたいのかというと、国内では稀少である海外の血脈 をそのまま日本に持ち込むことができるということなのだ。

 海外セリの上場リストには、日本ではあまり見ない「異系血脈」のお馬さんが何頭 か混じっていることが多い。
 活用しやすい異系血脈として、最も代表的なのがトムフール系だろう。ニジンス キー系、レイズアネイティヴ系とのニックスが成立するのだが、ゲームスタート直後 の日本国内にトムフール系の種牡馬は存在しない。
 序盤のニジンスキー系とレイズアネイティヴ系については、ヘイルトゥリーズン (サンデーサイレンス)系を絡めたトライアングルが大流行しているが、やがて「血の 閉塞」から血脈活性化配合が完全に成立しなくなったり、インブリードばかりの危険 な配合しかできなくなる恐れがある。
 しかし、これにトムフール系を絡めると一時的にトライアングルからは遠ざかる が、ヘイルトゥリーズン(サンデーサイレンス)系との配合さえうまくいけばニジンス キー系もしくはレイズアネイティヴ系との配合でトリプル+血脈活性化配合成立まで 持っていくことも可能になるのだ。
 もちろん日本から見た異系血脈はトムフール系だけではない。ヒムヤー系やニアー クティック系といったトムフール系以外のアメリカ血統や、フェアウェイ系やブラン ドフォード系といったヨーロッパ古来の血統も細々ながら存在する。
 これらを活用したい最大の理由は、血脈活性化配合を成立させることにある。
 血脈活性化配合は血統表中にある血脈のバランスを判断するもので、中段8マス中 に6種類以上の親系統が確認できない時点で爆発力ダウンが発生する。そのダウン幅 はあまり大きなものではないようだが、牧場長の配合コメントは良くても実際のス ピード値は期待したほどでは……となる場合も多く、スポイラー(低下要素)としては 決して侮れない。
 また血脈活性化配合による因子強調は、ニックスがなくてもスピード値の高いお馬 さんを生産できるアプローチの代表例といえる。特に血統構築における次世代配合 (別頁参照)で効果を発揮することだろう。

○異系血脈の導入・牡馬の場合
 ゲームスタート時、海外には存在するが日本には存在しない血統というのは意外と 多い(もちろんその逆もある)。このうちデフォルト(他馬主の持ち馬として活躍中、 もしくはこれから活躍するであろう能力を与えられている競走馬。スーパーホース= SHとも呼ばれる)がカバーしている血統を除くと、手薄な血統は下記の通りと思わ れる。

 ・オーエンテューダー系(欧州)
 ・トムフール系(米国)
 ・ニアークティック系(米国)
 ・ハンプトン系(欧州)
 ・ヒムヤー系(米国)
 ・フェアウェイ系(欧州・ライネルロードというデフォルトが存在するが進行状況 によっては種牡馬入りしない場合も多い)
 ・ブランドフォード系(欧州)

 これらの血統は親血統もマイナー気味で、零細血統として扱われやすい。牡馬を輸 入すればGTまでは勝てなくても、重賞勝ちだけで種牡馬入りできたりする可能性が ある。
 流行血統で固められた血脈に異系を取り込ませて、別の可能性を求めることもでき るようになることを考えると、非常に価値の高い存在となるのだ。
 また上記に挙げられていない血統でも、国内では零細かつ滅亡寸前な血統が存在す る。シンザンから繋がるボワルセル系はその代表例だろう。つまり零細血統の積極的 な導入も海外セリの重要な目的となり得るのである。
 ただし、これらの血統で調教師が閃く(オススメでうまく言葉にできないとコメン トする)というのは非常に稀である。実際に走らせるお馬さんの選択方法については 「外国産馬の選び方・競走目的」でも述べているが、とりあえず調教師が「すばらし い馬」とコメントしてくれれば重賞を勝てるだけのスピード能力はあるものと推測で きるので、それを参照すると良いだろう。
 あとはレースで活躍できるよう、プレイヤーが手を尽くすのみである。

○異系血脈の導入・牝馬の場合
 実際の馬産において、日本ではあまり見ない血統の繁殖牝馬は基本的に歓迎される という。
 理由は簡単で、日本国内のどの種牡馬と配合しても近いインブリードにならないか らだ。近すぎるインブリードは仔馬だけでなく母体にも悪影響を及ぼしかねないの で、WPで「危険」とコメントされるような配合はタブー、禁忌なのである。
 ではWPの場合はどうなのかというと、これは血統構成と同時に因子構成が判断材 料となる。
 初期の異系血脈は全体的に因子配列が薄めで、こういった血統の牝馬も自動的に因 子の少ない血統構成になる。つまり血脈活性化配合による因子強調を引き出しやすく なるのだ。
 また因子の少ない異系血脈牝馬との配合は、次世代に移っても有用となる。特にそ の配合で生まれた牡馬が種牡馬入りした場合、やはり配合相手によっては引き続き血 脈活性化配合による因子強調を取ることができたりする。
 こう考えると、最も有用なのが血統構築における父系の構築だろう。
 いわゆるシメ配合の基本形ともいえる「トリプルニックス+母父○+血脈活性化配 合成立」を狙うにあたり、母系はトリプルニックスへ持っていくために父系のニック ス対象血統を代重ねしている状況なので、父系の代重ねにニックスは血脈活性化配合 を考えると基本的に使えない。
 ニックス対象の親系統とは違った配合相手を探さなければならず、かつ最低でもス ピード値の現状維持を図らなければならないのだから、これはかなり難しい。スピー ド因子の強調がなければ、ニックス・因子強調以外の配合理論か、両親のスピード能 力を頼るしかなくなってしまうからだ。
 この場合、スピード値の高い海外産牝馬の導入が大きなメリットとなるのである。

○種牡馬・繁殖牝馬の先物取引的感覚
 生産者視点から見た海外セリのメリットは、なにも異系血脈の取り込みだけではな い。
 流行していない血統の牡馬を購入し、レースで活躍させることで種牡馬入りできる のはすでに述べた通りだが、自牧場に種牡馬繋養施設がある状態で所有すれば翌年か ら種付け料が収入として入ってくる。稀少血統でかつ活躍馬ほど種付けのニーズは上 がるので、この種付け料収入は決して侮ることはできない。
 また種牡馬繋養施設がなく手放す形になっても、それはスタリオン(種付け施設)へ の売却という形になるので、継続的な種付け料収入には及ばないが資金を得ることが できる。
 牝馬の場合はビジネス要素以外に、もっと大きな意義を持つものがある。
 特にゲーム序盤、競走馬を自家生産で揃えようと思っても繁殖牝馬がいなければど うしようもない。初期イベントで購入できる繁殖牝馬は別頁でも述べたようにたかが 知れているし、他牧場で繋養されているスピード能力の高い繁殖牝馬は軒並み高額 で、さらに上位ランクの二頭は絶対に売り渡してくれないのはご存じの通りだ。
 国内の繁殖牝馬セールに上場される繁殖牝馬も、たまに掘り出し物的なお馬さんを 見ることはあるが、やはりイマイチな感は拭えない。
 そこで活用したいのは海外セールだ。スピード値が高めのお馬さんが国内セリより も遥かに多いのはすでに述べた通りで、スピードという最低限の裏付けはできてい る。サブパラメータについてもプレイヤーが細かくデータを収集できるので、もし弱 点があってもそれを補うような配合を事前に考察することができるのだ。
 また、稀にダブル以上のニックスにリーチがかかった血統構成の牝馬も上場されて いる。さらに調教師が「すばらしい馬」とコメントしてくれれば、すでに繁殖入りは 約束されたようなものだ。
 高いスピード能力を持った牝馬を競走馬として持つことにより、レースでの賞金と 名声を稼ぐことができ、さらに繁殖入り後も自分で所有できるので繁殖牝馬としても 期待できる存在となる。

 こういった数々のメリットを考えると、外国産馬の導入は一種の「投資」ともいえ る。
 そしてその投資の見返りはレースの結果次第で、すでに何度も述べているがプレイ ヤーの運用法にかかっている。
 高いお金を払って導入した外国産馬を活かせるかどうかは、まさにプレイヤー次第 なのだ。


文:迷品短槍